今日、お日柄もよく

心浮き立つ遊びがしたい

私を見る時、何が見える?(ミュージカルVIOLET)

千秋楽滑り込みで観てきました~!不思議な味わいだけど好きでした~!しかしほぼ事前情報を入れずに観に行ったので、顔に大きな傷のある女の子がバスに乗って伝道師に会いに行くということしか把握しておらず、正直こんなものすごい勢いで三角関係になると思ってなかった(小声) 

とりあえずとんフリックの恋する様が好きすぎて、またしても梅田芸術劇場がお出ししてくる終盤トランク性格良男性に心ときめいてしまったッ…!(アナスタシアのオタク)

結構考えさせられる脚本で、観劇後ずーっと感想をこねていたんですが、行ったれ精神が爆発して大阪日帰りマチソワをキメました。それを受けて意見が変わったこともあるけど、とりあえず今回は初見時の感想を残しておく。

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池袋駅に以前出てた大きな看板。何の気なしに撮ったけど完全に推しカプの図である。

 

キャラクター感想

ヴァイオレット(三浦透子)

これは難しい役だな~!性格がいいとも悪いとも言いがたい。美しくなって誰かに愛されたい感覚自体は普通だし、精一杯自分を守るために強くあろうとしてきて、でもなんかちょっとおかしい。周囲から受けたルッキズムに自分も毒され過ぎてしまってて、そこから諸々歪みができてる感じなのかな。時おり見せるエキセントリックさが、わりとミュージカルの主役としては異色な気がする。でもそこがすごく人間らしくて、こういうキャラがいることって大事だよな。

ヴァイオレットをかわいそうだとは思いたくなくて、でも傷へのコンプレックスが強すぎるあまり、伝道師を信じようとしてる姿はどうしても見ていてかわいそうだと思ってしまう。あれは傷が信仰で癒されると本気で信じているように見えた。後で「本当はそんなことあるわけないってわかってた…」とか絶対言い出さないタイプ。たぶん本人が思ってる以上に顔というより心の傷が大きくて、それを誰にも癒されないで来たからこうなってしまったと感じた。幼少期の周囲の反応がひどかったんだろうな。

顔のパーツを入れ換えたら女優になるの、とヴァイオレットが歌うシーンがその象徴で。フリックとモンティは楽しそうに一緒に踊るけど小馬鹿にして笑っているし、確かに彼女は荒唐無稽で世間知らずな夢を語っているんだけど、誰かに評価されたいという願いは同世代の同姓として笑えないしなんなら切ない。ここは共感できる人多いんじゃないかな…?

傷ついた人の気持ちがわかるプロを自称しながらも、ガンガンにフリックの地雷を踏み抜いていくところは見ていていたたまれなかったけど、きっと誰しもがやらかすことなので観客がヴァイオレットを自分と重ね合わせられる気がした。だからなんか嫌いになれないんですよ…生き方が不器用すぎて、最後まで観ると応援したくなっちゃうんですよ…

パパの幻影に「私が綺麗だったから、どこにも行かないようにわざと怪我をさせたの?」と怒りをぶちまけたのにはびっくりした。正直(自意識~?!)とは思っちゃったんだけど、ママのいなくなりかたがわからないから、全く信憑性がないわけではなくさもありなんではある。病死かなと思ったけど、浮気して出ていったんかなぁ?まあ、あのパパはそんなことしてないと思うけどね!

しかし山育ちで引きこもり?かと思いきや、頭が良くてポーカーも強いしモンティもビックリしたように男性経験もあり(5ドル…?)、男性2人組にも引かない強さがある。でも達観しているかと思うとどこか子供みたいでもあり…やっぱりそのアンバランスさがフリックとモンティを惹き付けたのかな。正直タイプの違う2人に言い寄られてるんだからもっと自信持ちな!と思うけど、根底の自己肯定感が低いから受け止められないんかな…

序盤からフリックと心が通じそうな感じがあったので、メンフィスでモンティをあっさり受け入れたのが意外だった。「勇気」を感じたのがポイントだったのかな。「やることやってすぐ寝るんだね」あたりの、達観してるけど温もりを求めている切なさと母性?のバランスがよかった。

絶対フリックだよフリックにしなよ~!!!!と思いつつ、これはあくまで全体を見通せてる観客目線なので、ヴァイオレットからしたらフリックが何を考えてるか、自分がモンティといる時のフリックがどんな顔してるかわからないもんな…

翌朝フリックと口論になって「ベッドへの招待状を出せば良かった?」ってキレるところが好きだった。負けるなヴァイオレット。観客はフリックの思いに気づいてほしいけど、別に彼を待つ必要はないですからね…あと「お下がりなんてごめんだね」は嫉妬とは言え最悪だからね…

からかってくるモンティをうまくあしらって、ちょっと自己肯定感上げたかったのもあるのかな。でもやっぱり普通に恋してしまってウキウキしてるのは可愛かった。お菓子の包みを取り出して眺めてる後ろ姿から嬉しさが伝わってきて、そりゃフリックも嫉妬しますよねと…綺麗になった顔も、最初にモンティに見せたいんだよね(フリック派の私、胸が痛む)

テレビ伝道師との対話の後本を引き裂くシーンで、あ~フリックの住所が!もう会えないかも…!とそればかり考えてしまいました。伝道師からしたら、彼女は奇跡で直せるかどうかの前にただ顔に傷がある健常者なんだよな…ここは深いなと思いました。しかし父の幻影との会話で傷が治ったと思い込むのは、さすがに常軌を逸してるというか情緒がわからんかった…でもそれほどまでに強く救いを求めていたということか…

モンティのプロポーズに泣いてたのは、彼が本当にベトナムに行って死んでしまうかもって実感してのことだよね? オモチャの指輪なんて馬鹿にしないでってことかなとも思ったりしたけど、そこまで意地悪言わないか。

最後もモンティと別れてすぐ乗り換えるんじゃなくて、これからフリックと気持ちを確かめあいながらゆっくり進んでいきそうなところが良かった。この後いろんなことが起きる時代だけど、どうか一緒にいてね…しかし、忘れがちだけどこの人たち出会ってまだ3日なんだよな…全体的に感情が濃すぎるわ…

バスの人たちが一人また一人と去って行き、フリックも笑顔で扉の向こうに去り、1人で光の中に微笑んで終わるのが強さを感じさせて好き。ようやく自分で自分を認められたのかなと。観劇後にブロードウェイの音源を聞きまくって、改めて『光を見せて』ってなんて優しいいい歌詞なんだろう…

[ALL]

If I tell you my heart has been opened wide

If I tell you I'm frightened

If I show you the darkness

[VIOLET, FLICK & MONTY]

I hold inside

[YOUNG VI & FATHER]

Will you bring me to light?

私の中にある闇、ってヴァイオレットとフリックとモンティが歌うのがたまらないです…皆それぞれに闇を抱えて、それでも生きているんだ。

透子さんは初めてだったんだけど、歌はうまいし演技は自然だしで、想像以上によかった!はしゃぐ姿とアンニュイさのグラデーションが好きでした。そしてパンフレットの役の解釈がめちゃめちゃ一致してて、こんなん好きになってしまうよぉ。あとシンプルに名前がかわいい。

フリック(東啓介)

いや主人公の相手役じゃん!!カテコ2番目の人じゃん!!し、知らなかった…そのため始終とんちゃんの恋仕草にめろめろでした。東啓介、引き出しのある男…!同世代っぽい3人組の中では一番落ち着きがあるけど、それもある種の諦観から来ているのかな。時々等身大っぽく感情コントロールが不器用になるところが好きでした…!

フリックはヴァイオレットのことをかなり好きになってるのがありありと伝わってくるのが良かったけど、途中まではどこに惚れたんだ!?と思ってた。けどたぶん「俺が俺を見るように俺を見た初めての人」だったのがよかったんだろうな。

「俺を見る時、何が見える?」

「男の人」

「それが俺だよ」

「そうじゃない、パパみたいな、しっかりした大人ってこと」

セリフはニュアンスだけど、このやりとりがフリックにとってはとても大きなものだったのね。黒人であるフリックにしたら、自分を見る目のほとんどは嫌悪にきっと満ちていて、そんな中でピュアなヴァイオレットに惹かれたんだろうな。「将校になれるよ、モンティはあんたの言うこと聞くでしょ」も、偏見なしで自分を認めてもらえたみたいで嬉しかったんだろうな…!

どこかでヴァイオレットがフリックに「あんたのそういうとこが好き」ってさらっと言ってて私の心臓がドキドキしました。どんな反応してたっけな…ヴァイオレットを見た時に顔の傷を気にしなかったってところだったかな…? 2人はお互いに「自分を見てほしい」という願望があってそこが共鳴したんだと思うので、できたらこの後も一緒に過ごしてほしい…

好きなシーンはたくさんあるんだけど、メンフィスのホテルで「ずっと気になってたんだけど、その傷って痛むの?」「気圧が変わった時だけ…」でフリックの手がヴァイオレットの頬に触れそうな瞬間に一番トキメキがありました。モンティを置いて自分を追ってきたから、ちょっと脈ありかもと思ったのかな~~しかし女将、余計なことを…!(次回感想で補足します)

一夜が明けてバスで会った時の気まずそう~な感じの中で「その本貸して」と様子を伺いながらコッソリ住所を書き込んでる時の表情も好き。でもヴァイオレットも住所を渡してくれたからめちゃめちゃ嬉しそうに「本当に手紙書いてくれるってこと!?」って言う時の感情の高まり具合が本当にかわいくて好き~!「あのさ」の後何を言おうとしてたのか…

モンティとの友情もしっかりあるけど、彼に対しても「彼女を傷つけるな」ってスタンスを貫くところが誠実で良かった。ヴァイオレットの本を取ってからかって投げるモンティと、それを受け止めて一喝するフリックで対比が良く出てる。結構モンティの行動に口出しするもんだから、最初モンティに重大な秘密でもあるのかと思ったら、単に遊び人だからヴァイオレットがショックを受けないように…ってことでそれは優しさですね。牽制もあるとは思うけどね。

最後「バスから降りてきたお前を、お前にも見せてあげたかった」って、顔に傷があってもなくても自信のある振る舞いの君は素敵だよとヴァイオレットに伝えてあげるのが彼でよかった。そしてメンフィスでは言えなかった「君は俺と一緒にいるべきだ」を言えて、黒人だからと諦めていたことを諦めないようになれたのが正にヴァイオレットと出会えたからで、本当によかったよね。出会いの物語…!

「俺を見る時、何が見える?」が、最後「私を見る時、何が見える?」に帰結したのが良かった。台詞では返事してなかったと思うけど、あなたは人生の光(になりえる存在)…ヴァイオレットが父には聞けなかったことを聞ける相手、それがフリックなんだよね。

モンティ(立石俊樹)

カウンターでウェイターが黒人差別をする場面、決して見逃したり同調するのではなく「困るんだよなぁ、ガキが制服を着ると一丁前になれると勘違いするから!」が出てくるモンティはいい奴であるということがわかる。ゆえに最初の好感度がめちゃめちゃ高くて、観客のつかみはばっちりなんだよモンゴメリー(そんなに嫌なの?この名前)

モンティとフリックの友情はどのくらいで育まれたのかわからないけど、「私には傷ついた人の痛みがわかる」と言うヴァイオレットに「簡単にわかるなんて言うな」と返すあたり、かなりフリックの事情をわかってるし好意的だよね。正直あんまり同情的な性格ではなさそうだけど、最下層の白人と差別されている黒人、シンパシーを感じあったのかな。

ヴァイオレットとモンティって、めっちゃギスギスするわけではなく結構仲良くなれそうだし、なんなら喧嘩腰でも会話は弾んでるんだけど、ふとしたきっかけでかなり衝突するので、序盤は全然ここが恋愛に発展すると思わなかったな…(ラブコメ検定不合格)

メンフィスで部屋に来たのはいつもと同じ軽い気持ちだったのかな。男2人でいたら、どっちが先に落とすか的なゲームみたいな気持ちもあったのかな。フリックの気持ちに気づいていたのかいないのか、そこで見方も結構変わってくるのかな~と思う。気づいていたなら、これがフリックが持てなかった勇気なのか。でも「フリック? 呼んでこようか、狭くなるけど」とも言ってたし、多少は察してたのかも。迫りながら「ハニー」と呼んだ瞬間は、前後の脈絡がなさすぎて正直「ハニー?!!?!?」になりました。あとダンスして抱き締めている時の確かめるような表情めちゃくちゃ好きだった…あそこで本気なのかも?と思ったりしたな。

ピロートークで「俺のバイクは最高なんだ~」とヴァイオレットを後ろに抱きつかせるのが可愛かった。膝枕からの顔を伏せて腰に抱きつくのは泣いていた…のか…? グリーンベレーを喜んでくれなかった母親への悲しみと、ベトナム戦争への恐怖ってこと?

次の日から早速お菓子をたくさん買ってあげたり甲斐甲斐しいのは可愛かったけど「お菓子を買う方が相手をしなくていいからだ」とフリックに言われててそこはかとなく闇深かったよ…「待ってて、ビックリさせるから!」と捌けてから何をしてたんだろ?

「彼女は2倍苦しむんだぞ!」「その時俺はそばにいないからね」のさらりとした感じよ…「電話するよ」の言い方をフリックに教わる辺り、彼の情緒はどうなっとるんだ…でも「あの目を見ているとなんでもしてあげたくなっちゃう」と言って、フリックに習った「電話するよ」以上の「帰りもここで待ってるよ」が出てきたってことは、モンティはモンティなりにヴァイオレットに本気だったんだと思うよ。異様に割り切りが早いだけで…まさか膝を着いてプロポーズしてくるとは思わず。いつもの軽いノリだけどこれはさすがに本気だよな…でもグリーンベレーに入ってベトナムで戦うことへのプライドには、ヴァイオレットは敵わなかったんだな。

去り際の敬礼はヴァイオレットにしたのかなと思ったけど、反対側でフリックもしてるんだよね。モンティはヴァイオレットも好きだけど、フリックのことも好きだよね…「フリック、泣き止ませて」で去っていくのに本当にビックリしたんだけど、TLで「フリックに託した」って書いてあるのみて、ああそういう解釈もあるのか~と。いやでもオイ!

人間のクズと断じてしまうにはなんだかいろいろ抱えていそうすぎて、しかし決して誠実ではないのもまた確かなので、ある意味とっても生きにくそうである。どうしてもドッグファイトとかミス・サイゴンとか想起してしまうよね…

父親(spi)

何か重要な秘密があるのかと思ったら、スーパー不器用なだけだった!ちょっと!! 父がもう少し愛情表現できてたなら、娘はこんなにひねくれなかったよ!!!!大阪公演で印象が変わったので、父親については次回感想でしっかり書きたい。

ストーリー感想

わりと情報量が多いタイプのお話だったように思う。黒人差別、ルッキズムベトナム戦争と若者、父と娘のすれ違いなどトピックがたくさんあるので、「なんの話か」にくくるのがなかなか難しいかな~? 

私にとってはすごく印象に残る作品だし、追いチケしたくらい好きなんだけど、内包する問題の今っぽさに対する落ちの付け方にはモヤモヤが残らなくもない(古い作品だからというのはあると思うけど)。から、万人受けするかは微妙かな…? 友達になんて言って薦めるかめっちゃ考えちゃった。「自意識と差別とルッキズムに人はどう向き合うかって話だよ!」になるかな。問題提起になるお話だと思うしいろんな人の感想が知りたいから、ぜひ観てもらいたい~!!!

曲がマジでどれもいいです。ぜひ一度ダイジェスト映像観てほしい!

というわけで、大阪公演の感想も書くぞー!