今日、お日柄もよく

心浮き立つ遊びがしたい

憂鬱さえ後悔さえ美しく瞬く (Happily Ever After)

本当はアナスタシアの感想が終わったあと、上げようと思って書きかけになっていた記事がたくさんあるのだけど、それらをぶっ飛ばしてこの感想を書く。(公演から2週間経ってるけど)

東宝ミュージカルラボが、すごく良かった。

シアタークリエから、完全新作の短編ミュージカル二編を生配信。企画が告知されてから実施するまでが非常に短期間で、それでいてこのメンツ!すごい!と発表された時ワクワクしたのを覚えている。

二本立てのうち、特に惹かれたのはHappily Ever Afterの方。

夜を愛し、願いを込めて眠りに入る少女。
イマジネーションの力でどこへでもいける彼女にとって 一つだけ叶わないのは、彼に触れることでした。

ってすごい気になるじゃんか!あと単純に海宝くん見たさはあった。

 

舞台には薄紫色の照明が落ちて、それが白いベッドや2人の服に映えてとてもきれいだった。いくちゃんは正直全然注目したことがなかったんだけど、透明感が雰囲気にぴったりで、正にあてがき。ハミングのささやきがかわいい。演出とはいえ、口をあんぐり開けた驚き顔はちょっとイラッとしたけど笑 演じる主人公の名前はマリアってどこかで読んだけれど、特に説明はされていなかったように思う。

物語は背景から聞こえる両親の会話から始まる。食べ終わった後の食器のかたづけという些細な(しかし大事な)口論は夫婦喧嘩に発展し、少女はとぼとぼと部屋に戻ってくる。日記に何かを書き付けてから、ベッドに横たわり眠りに落ちる。(隣には影のようにダンサーが寄り添っている)そして夢の中で、突然現れた青年とコミュニケーションを取ろうと試みる…というのがおおまかな内容。実際に観てみると、結構上記のストーリーと違う物語だったなと。

彼女はイマジネーションでどこでも行けるというよりは夜に逃げ込んでいるのであり、さりとて「彼」よりは夢に重きを置いていないというか。彼の方が切羽詰まっていて、本当に夢でしか心落ち着けなさそう。また彼に触れるのも叶わないというより「よく分からないけど触っちゃいけない気がする…」って自分から極力近づかないようにしてたし。これはコロナ禍の演出だし作品の条件にもなっていたとはいえ、ちょっと露骨だったかも。でもミュージカルでソーシャルディスタンスを取り続けることって難しいと思うから(だいたい気持ちと物理的距離は比例する)、仕方ないのかな。触ろうとして弾かれるとか、手がスカッとすれ違うとかして諦める、みたいに物理的に無理です!って視覚で見せてくれてもよかったのにな~。

お互いに「これは自分の夢だ!」と主張しながら、かなりもどかしい(Not恋愛的な意味で)やりとりを繰り広げるので、序盤は微妙にイライラした。すぐどっちかが「あ~~~」って言うからかも。でも夢の中って得てしてもどかしいものかと思うと納得できる。後述する1作目とは逆に、めちゃめちゃ言葉で説明するぞ!という気概を感じた。それにしても、なんて面倒くさい海宝直人なんだ!!

びびっときたセリフは思わずメモを取りながら観ていたんだけど、そういえば劇場ではそんなことできないから、台詞を書き起こしながら見るというのは初体験だなと改めて思ったり。

「たくさん出てくる言葉の選択が難しい!」

と頭を悩ませる少女に対し、

「どれを選んでも大丈夫だよ」

「どの言葉が出てくるかわからないけど、どの言葉を選んでも僕に伝わる気持ちは同じだ。それだけはわかる」

と彼が語りかけるシーンが私の中では白眉でした。面倒くさくても、言葉にしないと人には伝わらないんだ…。

そして、確かそのシーンの前後で歌われる歌!この歌!

うわ~好きだ!大好きだ!

ジャジーな他幸感溢れる雰囲気と、ピアノのキラキラした音と高温デュエットがたまりません。よかった!事前に公開されたのを聞かなくて!

こういうドンピシャ好きな曲に予習なしでぶつかって聞き惚れるのが舞台の醍醐味のひとつだと思う。「憂鬱さえ後悔さえ美しく瞬く」「please please please Darlin please」をずっと聞いていたい。2人のデュエットって全然想像付かなかったんだけど、とても相性がいいのでは?作曲の清竜人さんはこれから注目していきたいな。確実に今年の好きな曲ベスト3に入ります。9月の海宝コンで歌ってくれないかな…。カーテンコール後、アンコール歌唱が全体のエンディングテーマみたいになっていたのもよかったです。

ラスト、2人がお互いを運命の人だと確信し、夢が覚めてもまた会えるように…と歌う歌もすっごく好みだったんだけど、曲名すらわからない…!「眠れぬ夢も目覚める夢も」「Because I with you」とか歌詞らしき走り書きが私の手帳に残されている。またどこかで聞きたい。テンション高い曲も落ち着いた曲もピアノだけで再現されていて、研ぎ澄まされていた…。

正直運命の人だと思うにはちょっと早急な気もしたけど、尺の都合だから仕方ないかなぁ。あと15分あったらよかったなぁ。少なくとも2人が「また会おう」って思うには十分な会話量だったと思います。

もうひとつ特筆すべきは、ダンサーのRicoさん。動きが猫のようで、いくちゃんの心の動きを機敏に柔らかに表現していて素晴らしかった。二人芝居じゃないんだ?と思っていたけれど、これはダンサーさんがいないとダメだ。少女が時折「どうかな?」と確認するように振り返ったりするので、イマジナリーフレンド的な立ち位置だったのかな。

終演後のツイートがとっても素敵だった。

正にこの舞台を観てから眠りについたので、とても夢見がよかったです。いい夜をありがとう。

 

というわけでHappily Ever Afterは大満足だったものの、同時上演のCALLは正直あんまり好みじゃなかったな。なんで苦手だったのかはきちんと書いておこうと思う。

ある時は森の中、ある時は深夜の海辺・・・人がいないところを選んで「聴衆のいない音楽会」を開き、
旅を続けるガールズバンド「テルマ&ルイーズ」が、とある廃墟に迷い込む。
かつて“劇場”といったその場所で、彼らは思わぬ先客と出会う。

荒廃した近未来?が舞台だったのかな。めみちゃん演じる実質主人公の末っ子ミナモは知らないことが多く、何かしら文化の分断があったことを思わせる。30分でバッドエンドにはならないだろうということで、先客とは劇場専用ドローンの木村達成だったのでした。たつなりがええよという事前情報通り、ちょっとオドオドしたまさかの機械キャラは確かに新鮮だった!翼が壊れちゃっているのが切ないね。風ちゃんしかりキャストは皆歌唱力抜群でとても良かったんだけど。バックストーリーがフワッとしすぎていて、私はある程度説明のあるストーリーが好きなんだなと。

あとは、ミュージカルというより単なるお芝居ぽかったからかな?挿入歌的に歌パートとして歌うより、気持ちを歌で説明してほしかったのかもしれない。それとセリフ回しがややゆったりめなのがどうにも気になってしまい…。森本さんの演じた長女のキャラが、若干強引な感じで苦手だったんだと思う。妹たちのために意図的に明るく振る舞っているのではないかという考察を見たので、わざとそういう演技なのかもしれない。

ドローンのヒダリメと人間のミナモが心を通わせる様はとても良かった。公演を観に来たお客さんの話をしながら、少しずつ近い席に移動していく二人。ただ、演出の都合上結局隣の席には座らないという笑。最後皆で「観客」に向かって歌う歌は好きだった。小さい頃に見たファミリーミュージカルを思い出して、電車の中で泣いちゃった。へーい、ヒダリメ。聞こえてますか。公演の後ミナモたちはまた旅を続けて、ヒダリメは劇場に残り続けるのかな…。

 

正味30分のお話だと書ききれない部分はたくさんあると思うし、起承転結を付けるのは難しいんだなとしみじみ思った。稽古も2週間しかなかったそうで、でも今できる最大限を届けてもらったんだなと思う。保守的なイメージのある東宝がこんな挑戦的な試みをすることがいい意味で驚きだったので、これからもどんどん新しいことをやってほしい!今回はオリジナルミュージカルなので、音源か円盤をぜひ残してほしいなぁ。